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「また能書きだけ垂れるじじいどもの相手か……」
よっぽど面倒くさいのだろう。
面倒くさそうに髪を直し始めた。
「じじいなんて間違っても本人達の前で言わないでくださいよ!」
今時メモ帳を広げてスケジュールの確認することはないのだが、その女はメモ帳を手元に開きスケジュールを確認している。
橘は窓の後ろについたワックスを気にすることなくその女のメモ帳に目を落とした。
「桜木君、私がそんなボンミスするわけないだろう?」
桜木君と呼ばれた女は肩ほどにすらっと伸びた髪を軽くかき、うなずいた。
「そうですね。橘先生の凄さは間近で感じてきましたから」
桜木の声に反応するかのように、流れていた車窓の風景が止まった。
「橘様、到着しました」
車内に軽く響く機械音で音声が流れる。
「桜木君濡れティッシュ持ってる?」
桜木は少し大きなバッグから濡れティッシュを一枚取り出して、橘に渡した。
ワックスが付いた手をそれで拭いている間に車の椅子が元に戻った。
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