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 唐突ですが、俺はオメガとして産まれちゃいました。  圧倒的な数がいる、ベータに産まれてくれれば良かったのに。とよく母に言われてましたよ。  アルファもオメガも数が少ないから、俺もせめてベータだったら、とか思ってましたけど。  だって、普通に女性に備わってる機能を、わざわざ発情期に体の中に作り出すオメガという性が、俺にはよくわからないから。  だから、兄には馬鹿だ馬鹿だと、よく言われたんだろうか。  自分の境遇を、しっかりわかっていないから、俺は馬鹿なんだろう。  俺は侯爵家の次男であり、片田舎から嫁いだ母の二番目の子だ。兄はアルファだったから、期待を裏切った気もする。  国の中枢で働けるのは、一握りのアルファ。俺なんて、何の役にもたたない。  だから、要らない子どもなんだろうなっていうのは、わかってたんだけどさ。  アルファに比べたら、頭の出来なんて雲泥の差で。父も母も兄も、早々に俺を田舎に送って、居ない人間にした。  祖父さんは好きだ。俺の性について何にも言わない。  こんな田舎じゃ学べるものも学べないと、家庭教師を付けてくれたくらいに優しい人だ。     
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