僕を見下ろす花火の熱さを

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「もう後ろめたくならない。オレが笑うこととか楽しむこととか、怒ったり泣いたり、……全部、後ろめたいことなんてないんだって……颯真が言い続けてくれたこと、やっと分かった」 「……司」  欲張りなオレは、颯真が隣にいて章悟がどっかから見てくれてるかもって実感に、ようやくホントの意味で前を向けた気がするんだ。  時々は、章悟を想って泣いたりするかもしれないし、苦しくなったりするかもしれないけど。  それでもやっと、全部に区切りがついた気がするから。 「来年は、最初から最後まで……花火行こって誘ったり、誘われたりするところから、ずっとわくわくして楽しみだと思うから。……来年も、来ようね」 「…………──だめだよ」 「……そうま?」 「まだ、今年の夏祭りが終わった訳じゃないから」 「ぇ……?」 「仕切り直しね。もっかい焼きそば買ってお好み焼き買って、……さすがに唐揚げはもういらないから、りんご飴買おう」 「颯真……」 「でっかい花火は無理だけど、コンビニで花火買って、花火しよう」  ね、と笑った颯真がひょいっと立ち上がって、オレの目の前に手を差し出してくれる。 「一回目の花火が淋しいままなんて、嫌でしょ。一回目も楽しかったって、思ってて欲しいから」 「そうま……」 「──司、夏祭り行こう。花火もあるんだって」  仕切り直しの誘い文句に、胸がぎゅうぎゅう苦しくなったけど。  一つ息を吸って涙を堪えたら、差し出された手を握り返して笑う。 「うん、行く」  返ってきたのは、花火よりもキラキラに弾けた笑顔だった。
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