僕を見下ろす花火の熱さを

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「…………いいな、腕」 「ん?」 「オレ、全然太くなんないから」 「そもそも食べないからだよ」 「……それはぁ」 「分かってるけどね」  全部分かってるみたいな優しい顔で笑う颯真から、ふぃっと視線を逸らす。そっぽ向いた横顔に感じる颯真の優しい視線に、いじけた心がまた溶けたけど。自分ばっかり子供みたいな気がして、取り繕うはずだった声は拗ねた音になった。 「……前はちゃんと、運動もしてたんだよ」 「そうなんだ?」 「ハンドボールやってたんだ、中学の時に部活で。高校は何もやらなかったけど」 「へ~、なんか意外」 「……颯真は?」 「オレも中学、高校の時はやってたよ、剣道」 「剣道かぁ」  なんかぽいなぁ、なんて呟いたら、また無意識で颯真の腕に手が伸びる。 「いいなぁ」 「…………──司」 「んー?」 「もう、その辺にして」 「んー? なんでー?」 「オレの理性がもたなくなっちゃうからね」 「っ!? だって、腕っ」  触っただけだよ!? なんて慌てながら手を離して、体もほんの少し離したら。  颯真は、触り方がエロい、だなんて心外なことを真顔で呟いて、オレを正面から抱き締めてくる。 「全く。司は小悪魔だよねぇ」 「ちがっ」 「ホント、困っちゃうなぁ」 「んぅっ」  意地悪な目で笑った颯真に唇を塞がれてジタバタ暴れようとしたのに、逞しくなった腕にガッチリ囲われたら身動きもとれない。 「ふぅ、っん……っふぁ」 「旅行の話は、また明日ね」 「ん、やっ……ッぁ」  結局、キスと指先に翻弄されたら、なし崩しで()けるしかなくて。  すがった腕が逞しいからまた複雑な気分になりながら、いつもよりも強く長く抱き締めてくれる颯真を、ちょっとだけズルイと思った。  *****
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