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会場の最寄り駅に16時。
花火の前に屋台もひやかすことを考慮して決めた待ち合わせの時間は、万人共通の考え方だったらしい。駅は多くの人でごった返していて、きらびやかな装いの渦に飲まれて呆気に取られるしかない。
こんな人混みでちゃんと出会えるのだろうかと不安を覚えながら、着信を逃すまいとスマホを握りしめて人波に目を凝らす。
「──司!」
不意に名前を呼ばれてキョロキョロと見回す先に、見慣れた笑顔を見つけてホッとして
「颯真」
笑い返して手を振ったら、何故だか慌てた様子で颯真が走り寄ってきた。
「ごめんね、待った?」
「ううん、全然。走んなくて良かったのに」
「だって」
「だって?」
「司が、笑うから」
「?」
「あんな顔……見たらみんな、司のこと好きになっちゃうよ」
「なっ、」
何を気障ったらしいことをと照れ臭さを笑い飛ばそうとしたのに、ふて腐れた子供みたいな顔で唇を尖らせる颯真は、本気でそう思っているのだと気付く。
いつも何でもそつなくこなすし、どちらかといえば達観しているように思えるのに、どうも無自覚に気障なだけでなく、独占欲も強かったらしい。そのことに颯真自身でも気付いて戸惑っていたのは、指輪をもらう前の話だ。
あれ以来、こうしてちょくちょく独占欲を素直に表に出してくる。
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