僕を見下ろす花火の熱さを

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 司が食べたいって言ってた焼きそばを買って、お好み焼きも買って。匂いにつられて唐揚げを買って、人混みの暑さに耐えかねてかき氷を買う。  あれもこれも欲しくなるけど両手が塞がる手前でやめておいたのは、手を繋げなくなるのが嫌だったからなんて。言ったらさすがに、司に笑われるだろうか。  だけど、歩き慣れない人混みの中をトタトタ歩く姿は。  控えめに言ってもとんでもなく可愛いから、正直困る。誰にも見せたくないのに見せびらかしたくて、ヤキモキするのにドヤ顔したくてしょうがない。こんなに可愛い司はオレのなんだぞって誰彼問わずに言いふらしたくなるけど、誰にも盗られたくないから隠しておきたい。  矛盾する気持ちに混乱するのはいつものことで、独占欲の強さには自分でも呆れている。 「……ねー、そーま」 「んー? どしたの?」 「かき氷、溶けちゃう」  繋いだ手をくいくい引く幼い仕草だとか、困った顔だとか。  何しても可愛いって思うのはオレの頭がおかしいせいかなと悩みながらも、自分の顔がデレデレと雪崩起こしてる気がしてしょうがなくて必死で取り繕う。 「そっか…………じゃあ、かき氷だけ、先に食べちゃおっか」 「ん」  小さな小さなサプライズを胸に秘めて、花火の場所取りをしてから、と司を言いくるめて手を引いていたのだけれど、さすがに溶けたかき氷は嬉しくない。キョロキョロ辺りを見渡して近場に空きスペースを見つけたら、司の手を引いて隅の方へ。  辛うじて形を残している溶けかけのかき氷を二人で半分こして、一瞬の涼しさにホッと息をついた。
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