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「─────香織、ひとりにしてごめん。」
両方の眉を下げて、今にも泣きそうな顔で呟く佑真。
その一言が、香織を今まで必死に塞き止めていた何かを奪い取った。
「ゆぅまぁぁあっ───!ずっと・・ずっと、会いたかったぁぁあっ」
香織は、ボロボロと涙を溢しながらベンチから立ち上がると、ベンチに膝を付けて後ろに立っていた佑真を抱き締めた。
すると、佑真の優しい手の感触が後頭部から感じる。
「───ごめんっ。本当にっ・・俺も会いたかった。」
そう言って、香織の頭に頬を擦り寄せてくる。
「それから──・・誕生日、おめでとう。」
「─────っ、ばかあっ!死んじゃった癖に、そんな事わざわざ言いに来る人なんて、きっと佑真くらいだよっ!」
せっかく化粧をしたのに、涙でぐしゃぐしゃにさせて、そんな憎まれ口を言う香織に、優しく微笑む佑真は香織の頭を撫でる。
「────香織、忘れちゃった?流石の俺も、おめでとうを言う為だけに来ないよ。・・多分ね。」
佑真がよく見せた、悪戯っぽい笑みを浮かべながら訊ねるけど、香織は首を傾げた。
「───やっぱり、覚えてないか。」
そう言って、ベンチの後ろにいた佑真は、香織が居る正面の方に移動してくると、香織の左手をとった。
「約束を果たしにきたんですよ。お姫様っ。」
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