5人が本棚に入れています
本棚に追加
遠くの方に沈みきっていない夕陽が見える。
あと少しで、完全に陽は落ちるだろう。
そろそろ暗くなり始めた公園のベンチの前に二人、向かい合って見詰めている。
「────や、約束?」
お姫様だなんて言って、手を取ってくるものだから、恥ずかしくてちょっと狼狽える香織。
だけど、そんな香織をも愛しく見詰めて微笑む佑真。
「そうだよ。香織の二十歳の誕生日の時、傍に居られたらっていうやつだよ。」
佑真は、クスリと笑うと手を取ったまま、その場に跪いた。
「俺と結婚してくれますか?」
佑真の言葉で、香織はハッと思い出した。
「────そうだったね・・そうだった。約束したよね。」
香織は、沢山流した筈の涙を、また瞳の中に溜めて頷く。
「─────はい、喜んで。」
香織の返事を聞くと、佑真は香織の左手の薬指に口付けを落とした。
最初のコメントを投稿しよう!