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日は遡って、香織と佑真が付き合い始めたばかりの高校一年生の春。
香織と佑真は学校の制服のまま、いつもの検診の為に病院へやって来ていた。
「─────うん、ここのところは割と良好だね。だけど、油断してはいけないよ。少しでも異変を感じたら、すぐに連絡を入れること。」
佑真の担当医に、佑真は返事をして待合席で待っている香織の元へ行く。
「───佑真っ!どうだった?」
少し心配そうにしている香織に、佑真は愛しく思いながら答える。
「大丈夫だって。最近、調子がいいみたい。」
佑真の言葉に安心した香織は、心配そうな顔から笑顔へ変わると、ホッとしたように柔らかい溜め息を吐く。
そして、二人は病院から近くの公園にやってくると、広場の周りの斜面に並んで座った。
「やっぱ、ここは気持ちいいなあーっ!」
大きく両腕を伸ばして、そのまま後ろに倒れる佑真。
そんな佑真を、微笑ましく見ている香織。
公園を見渡すと、子供達が声を上げながらボールで遊んでいる。
すると、ボールを蹴るのに失敗してしまったようで、こっちにボールが飛んで来た。
きっと、これが少女漫画とかだと、佑真がカッコよくボールをキャッチして、子供達に混じって爽やかな笑顔を振り撒きながら遊んだりするのかもしれない。
だけど────
そのボールは、綺麗な弧を描いて寝転んでる佑真の顔面に落下した。
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