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「小暮さん。これ、お返ししておきます」
それからしばらく。流れていた涙を拭いた小暮を視界に納め、神楽坂は手に持っていたお守りを、小暮へと手渡す。
「……ありがとうございます。本当に、ありがとうございました」
お守りを鞄に戻したのち、机に頭を付ける勢いで、小暮は神楽坂に頭を下げていた。五秒、十秒程、かなり長い間頭を下げていた小暮は、体を起こすとその表情には先ほどと違って活気が戻っているように感じられた。
「すみません。お会計をお願いします」
「えぇ。わかりました」
三人は席を立ち、レジへと向かう。お会計を終え、ドアに付けられている鈴の音が鳴った。颯爽と店を後にする小暮とは対照的に、粘着質な夏の熱風が店の中を駆け巡っていた。
終
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