神楽坂茶店

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 軽快な鈴の音がなる。ガラス張りのドアが開かれ、脱兎が駆け込むかのごとく熱風が室内へと飛び込んできていた。 「いらっしゃいませ」  ドア口にはスーツを着た中年男性の姿。右手からはまだ新しそうなビジネスバッグをぶら下げている。  営業回りかとも思ったが、そのわりにスーツはよれきっており、表情にも覇気がない。  疑問は色々あれど、客人は客人である。机を拭いていた男性こと神楽坂は、客人を窓際のテーブルへと案内した。 「ご注文が決まりましたら御呼びください」  テーブルにメニューを置く。あくまで表向きは茶店である。甘味系統のものやドリンクの名称がメニューには書いてある。  ふと、立ち去ろうとした神楽坂に声がかけられる。 「あ、あの、すみません。この店は思い出を再現できる店、と聞いてやってきたのですが…」  やはりその系統だったか。と神楽坂は思う。 「御客様。お名前と御持ちしたものを出していただけますか? 京子!」  客人に対して用件を告げると共に、神楽坂は店の奥に向かって声をかけた。  ゴソゴソと音がした後、まだ年端もいかない幼女が姿を現す。目元を擦る仕草を見るに、サボって寝ていた様子。 「おいこらサボるな」 「ふ、ふぇ、おはようございましゅ、ものよみしゃん」 「寝惚けるな。今は昼だ。後でサボってた分減給な」 「ふへ…え、えぇぇ!そ、それだけは御勘弁を!」  減給と言う言葉に反応したらしく、客人がいるにも関わらず、京子は店内に響き渡る悲鳴を上げていた。
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