神楽坂茶店

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「あ、あの…」  二人のやりとりを唖然とみていた客人が声を出す。 「あぁ、申し訳ありません。改めてお名前と御持ちしたものを出していただけますか?」 「あ、名前は小暮 正彦(こぐれ まさひこ)と申します。持ってきたものはこちらに…」  ビジネスバッグの口を開く客人こと小暮。ふと見えたバッグの中からA3サイズのアルバムが姿を現す。 「ふむ。アルバムですか」 「はい。高校時代のアルバムでして。当時私はサッカー部だったんですが、決して強い部、と言うわけではなかったんですが、この当時はとても幸せだったなと思い返していまして…」  途切れることなく言葉が続く。話をするほどに断片的な快感情の記憶が甦るのだろう。中の写真を見ながら語る小暮の表情が豊かになっていくのを、二人は黙って見ていた。 「あ、すみません。聞かれてもいないのにベラベラと喋ってしまって…」 「いえ。大丈夫ですよ。とは言え時間もありますので始めましょうか」 「はい。よろしくお願いします」  小暮が差し出したアルバムを受けとると、神楽坂は向かいの椅子に腰掛け、一つ息を吐いた。
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