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☆
響き渡る声援が鼓膜を震わせる。額を伝う汗、視界の先にはゴールネットに突き刺さったサッカーボール。
「京子、御客さんとコンタクト」
見せてよい光景だろう。神楽坂は判断をして、近くにいるであろう京子へと指示を出す。
「こ、これは…」
脳内に響き渡る小暮の声。京子は無事に仕事を果たしている様子だった。
「本当にこんなことが…これはあれだ。三年の時の地区大会決勝のシーン」
見ればホイッスルが鳴ったらしい。方やサッカーフィールド中央にあつまり互いに慰労を称え会う男達。方や下を向き、拳を震わせている別ユニフォームを着た男達の姿がある。
「懐かしい…必死こいて練習して、念願の地区予選を突破した時か…あぁ、なんか、涙が出てきた。ホントに懐かしいなぁ…」
視界が揺れる。刻々と慰労を称えあうグループとの距離が縮まる。彼らのうちの何人かがこちらへと駆け寄ってきて一拍。肩を組まれ、集団へと連れ込まれていた。
「やったな! マジで」
「あぁ、念願の地区大会突破だ!」
「死にそうだったが必死こいて練習してきて良かった」
「あ、おいほら、集合かかってるぞ」
整列し、互いに挨拶をかわす。表情は見えない部分もあったが、小暮のチームは誰もが満足げな表情を浮かべていた。
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