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☆
神楽坂は目を開ける。視界の斜め左には神楽坂と小暮の腕を掴んでいる京子の姿があった。
正面の小暮は、目を閉じていたが、その目尻からは涙が流れていた。
「こんな幸せな時代…そういえばあったなぁ…」
神楽坂は空いていた右手でテーブル上にあるお茶を飲む。恐らく京子が用意してくれたのだろう。テーブル上にはお茶が入ったグラスが三つ並べられていた。
無言のまま時は流れた。一通り涙を流しきったあと、小暮は儚げな笑みを浮かべて神楽坂に声をかける。
「ありがとうございました。思い出を再現できるってこう言うことだったんですね。最後に良い思い出を思い出せて良かったです。ありがとうございました」
神楽坂からアルバムを受け取り、ビジネスバッグへとしまう小暮。何かを決意した表情に、神楽坂はひとつ声をかける。
「小暮さん。そのバッグは御自身で買いに行かれたのですか?」
唐突な問いかけに小暮はきょとんとするが、質問の意味を飲み込んだようで答えを返す。
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