第1話 熱中症の隣人

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 俺は、エアコンの温度を下げ、ビニール袋に氷を詰めたものを二つ作ってベッドへと持っていった。 「冷たいけど、我慢しろよ」 「ひゃっ……」  脇の下にそれを挟むと、京の声が掠れ上がった。俺はその声に刺激され、意思とは無関係に心臓が早く打ち始めるのに、若干慌てる。  だが、初めは女と見違えた綺麗な顔立ちだ、無理もないかもしれない。  次は冷たい水を彼に与えるつもりだったが、グッタリとした京は、起き上がる事は出来ないだろう。治療の為。そう頭の中で唱えながら、 「京。水飲ませてやるから、目ぇ閉じてろ」  俺はグラスに入った氷水を、自らの口内にゆっくりと含みながら、唇の端だけで小さく笑った。
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