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果たして穴は……空いていた。
ひとまずブルーシートを掛けないと…と、あきらめの気持ちで家に戻った。
すると、起き上がっている凌と出会った。
「明生。電話が鳴ってた」
「あっ」
明生はリビングに置いてある電話を確認する。
「よかった、お客さんじゃない」
家の隣にある事務所から、転送にしてあるのだが、仕事関係の電話ではなかった。
「こんな朝早くに…まだ6時過ぎじゃないか」
「うちは朝6時から夜24時まで受付なんで」
「…明生、いま、何の仕事をしてるんだ?」
「……追々、話すよ」
それから朝食を作り始めた。昼食は食べない前提でいるから、朝は多目に作って、食べておく。
ごはんを炊き、ごった煮の様な味噌汁を作り、刻んだ魚肉ソーセージとネギを入れた玉子のぐしゃぐしゃ焼き(オムレツ)、それから凌の目を気にして、普段はない副菜類を並べる。実家にひとり暮らしで貧乏くさい朝食…と、思われるのがいやだったのだ。
「すごい。朝食なんて食べるの……二十歳を越えてから、十回もないかも」
すごい、が、朝食を食べる行為を指しているのに、明生は内心、ガクッときた。
──自分で作ってるのかとか、美味しそうだとか、言わないのかっ。
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