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だが、だからこそ、目の前にこの男がいる光景が不思議で仕方がなかった。
★
元工場…いまは主に廃品置場から出ると、その隣に事務所、目と鼻の先に自宅がある。
2年前に、母親も病死してから、一戸建てのその家で、明生はひとり暮らしだった。
とにかく激しい打ち身の志鷹凌を、玄関入ってすぐの和室に通す。
母が亡くなってすっかりきれいに片付けたが、そこを何かの部屋にする気にもならず、こんな時もあろうかと客間用に空けておいたのだ…が。
──こんな時があるとは、さすがに思わなかったよなぁ…
志鷹凌は、申し訳なさそうに畳の上に立っているが、ずっとそうしているのはつらいらしく、柱にもたれかかった。明生はクッションを持って来ようとして、それよりも布団かと思い、2階にある布団一式を急いで運び下ろした。
サッと敷き布団だけを敷くと、志鷹凌はそこへ崩れる様に転がり込んだ。
「ハァ… セーフだったな」
「何がセーフだよ」
明生は、掛け布団はその辺にまず置いて、志鷹凌の上着に手をかけた。
「これ、脱いだら? 寝にくいだろ」
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