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 自分をそう呼ぶ、いま身近にいる人たちを思い浮かべるが、その中に家族はいない。 「そうだ、明生。最初に断っておくことが…」  志鷹凌…凌は、いちばん大事なことを忘れていた、という面持ちで、明生を見上げていた。 「ん、何?」  明生も、真面目な面持ちをして、凌を見る。 「あの天井、俺が壊したんだろうな? 必ず直すから」 「…そ、そうかよ」  工場だった建物の屋根など、簡単に直せるものでも、安いものでもないのだが…それもわかって言っているのか…微妙だった。 「すまない。おまえのところだと知ってたら、ここに落ちなかったのに」 「あ、あっ、そうだよ! それ…!」  凌は、そう言って慌てている明生を、本気で不思議そうに見上げていた。 「だから、なんで、落ちてきたんだ、おまえ?」  どうやってここに?──そう、続けたかったが、凌が、物凄く哀しそうな表情をしたので、明生は言えなくなってしまった。  凌は目を伏せ、黙っていた。瞬きをする際、いまにも涙を零すかに見えて──明生は息をつめて見守った。 「……ごめん」  ようやく、絞り出された凌の声に、いまはどうしても話せないのだと察する。  納得いくいかないで言えばいかないが、この時点では、どうしようもないらしいと思うしかなかった。     
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