事故

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「うん。いい題材が頭に浮かんだからノートに書き留めないとと思って立とうとしたんだけれど・・・足がないことを忘れてた」 僕はそう言って自分でもわかるほど苦い笑みを滲ませていた。 そんな僕を(あや)さんは屈託なく笑ってくれる。 それが何よりも有り難く、僕は嬉しい。 同情や悲観的なのは好きじゃないし、もう飽きてしまった。 「本当に気をつけてくださいね? また記憶を失ったらどうするんですか?」 (あや)さんのその言葉に僕は小さく頷いて微笑んだ。 また記憶を失ったら僕はどうなるのだろう? そんな思いが一瞬、脳裏を掠めた。 もういっそのこと自分の名前も何もかも忘れてみたい。 そんなことを心の内で思う僕は酷いひねくれ者だ。 「そしたらまた(あや)さんと同じ会話ができるね」 僕のその言葉に(あや)さんは盛大に吹き出した。
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