事故

2/8
前へ
/193ページ
次へ
嗚呼、そう言えば僕の自己紹介がまだだったね。 僕の名前は斎藤(さいとう) 大翔(ひろと)。 歳は31歳で独身。 ちなみに彼女はいない・・・と、思う・・・。 父さんも母さんも僕に彼女がいたなんて言わないからたぶん僕にはそんな特別なヒトはいなかったんだろうと僕は勝手に思っている。 事故の際に使っていたスマホも壊れてしまったし、入院中に特別、僕と親しそうな女性も来なかった。 それにいたにしろ、いなかったにしろ、どちらにしても悲しい話だ。 もしも、僕にそんな特別なヒトがいたとして、そんな特別なヒトを忘れてしまっているのなら僕はこれ以上ないほどの極悪非道な薄情者だし、いなかったならいなかったで僕は寂しい男なのだから・・・。 そんな僕の職業は小説家。 それなりに名は売れていたらしいが今の僕の記憶の中にはそんな事実は存在していない。 けれど、僕のペンネームで書籍化されている本たちを見ればそれはどうやら本当のことのようだった。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加