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僕は自分の左足を膝上から失った事実と記憶を失ってしまった事実を仕方なく受け入れ、動かない身体を煩わしく思いつつも頭の中で文章を書き留め、その文章を頭の中で何度も繰り返し、読み返した。
左足を失っても記憶を失っても僕は一人の小説家だった。
そして、それは記憶を失っても僕は僕だったと言うことだ。
僕には小説家としてのプライドがあり、誇りもあった。
記憶を失ってもそれだけは忘れなかったのだからそれは相当な執念、執着だと僕は思う。
嗚呼、また面白い題材が頭に浮かんだ・・・。
早くノートに書き留めないと・・・。
そう思って立ち上がろうとして僕は転んだ。
嗚呼、そうか・・・。
僕は片足を失ったんだった・・・。
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