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ゴトリと言う重たい音と共に僕は冷たいフローリングの床の上に転げ落ちていた。
転げ落ちた際に打った箇所には鈍い痛みがじんわりと広がり、僕は今、生きているのだと感じさせられた。
その重たい音を聴き取った彩さんはすぐに『大翔さん!?』と悲鳴のような声をキッチンから上げた。
「あ、大丈夫、大丈夫。ちょっと転んだだけだから」
僕はそう言いながらなんとか上体を引き起こし、駆け寄ってきてくれた彩さんにじんわりと微笑んだ。
僕に駆け寄ってきてくれた彩さんは今にでも泣きだしそうな顔をしていた。
彩さんのそんな顔を目にした僕は苦く微笑むことしかできなかった。
そんな自分がひどく、もどかしい・・・。
「お怪我はありませんか? 本当に・・・本当に大丈夫ですか?」
彩さんは僕の背中にそっと手を置かれるとそう心配してきてくれた。
それに僕は『うん』と頷いてまた微笑んだ。
僕の背中にそっと置かれた彩さんのその手は本当に優しくて、温かかった。
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