本屋さんと液タブ

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 イラストの基礎知識と練習用のサンプルが掲載された薄手の本。その描き込み練習ページを開き、鉛筆と共に渡したのだ。 「こんなことをして意味があるのかしら」 「何事も基礎は大事よ」  作業を中断し、しぶしぶくれははノートに描き込み始めた。最初は久しぶりの鉛筆に違和感を得ていたが次第に馴れていき、二時間ほどで各ページの練習ページをなぞり終える。  それから真白な紙に線を引くとくれはの顔にようやく笑顔が出てきた。 「こんな感じかしらね」 「すっかり本調子じゃない」  読子に渡された練習ノートを終えたくれははすっかり復調した。かに見えたが、またペンタブを使おうとすると話は変わったしまう。  紙には思い通りに描けてもペンタブには描けないからだ。 「紙には上手くいくのに」 「もしかして……ちょっと貸してみなさい」  読子もそれに不安がってペンタブを借り、そこに簡単な絵を描こうとした。だが読子も上手くいかない。こうなると疑うのは機械の方である。 「やっぱり。これペンタブの方がおかしくなっているじゃない」 「そんなわけ無いわよ。高かったんだから」 「高くても何でも壊れるときは壊れるわよ。それに最近、これに変なことしたりしなかった?」 「それは───」     
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