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 販売という仕事は、一日が終わるとくたくたになる。それなのに食事をとることができない。そのせいで、しゃれにならないくらい痩せて、周囲から摂食障害を疑われた。上司にすすめられたクリニックで点滴を受けた。  日中は死んだ心と身体を仕事に没頭させることで、かろうじて生きながらえた。  問題は休日や夜で、「必要ならこっちから連絡するから」という言葉を心の支えにして、鳴るはずのない携帯をただ命綱のようににぎりしめ過ごした。  考えるのは保科のこと。そして保科の「特別」であるキョウイチのこと。保科を思い、ふらふらの身体で自慰をし、泣き、また自慰をした。  ある夜、待てども待てども一度も鳴らない携帯を壊すことにした。しかし壊した瞬間にパニックになった。  今、この時、保科が自分に連絡をしようとしていたら、という思いにとりつかれてしまったのだ。  たまたまその日、保科はこれまでのことを九月に謝罪しようと思いたつ。やはり九月が必要だと気づき、電話をかける。しかし、九月は出ない。(なぜなら携帯は壊れている)そこで保科はあきらめてしまう。  あきらめてしまった保科は、……信じられないことにあきらめるのだ……九月に二度と連絡しない。  そんなストーリーが頭にうかび、気がふれたようになった。     
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