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 クロゼットや衣装ケース、段ボール箱、まだ封もといていないショッピングバック、靴箱などの中身を一つ一つ開け、手に取って確認した。最初は真面目に選別をしていたが、だんだん判断がおっくうになり、何もかも嫌になった。そのまま物の中に倒れてしまうと、起き上がれなくなってしまった。  服、帽子、スニーカー、ブーツ、ストール、マフラー、アクセサリー、ベルト、ネクタイ、スーツ、古着、バッグ、靴下、時計、何かのノベルティの小物……高価なもの、安かったもの、レアなもの、どうでもいい、もの。いくらでもどんどん出てくる、  どれも必要で、どれも必要じゃない。  このまま服にうずもれ窒息したい。そんなやぶれかぶれな気持ちになってゆく。  シャツのタグもそのままに袖を通す。同じように、ほとんど履かずにしまいこんでいた靴を素足に履く。さらさらとした新品の肌触りと、匂い、固い履き心地。購入した時の高揚は記憶にまだある。それなのに、その興奮と実際ここにあるものとが、少しも結びつかなかった。  もの達の中で、埋もれたまま、目を閉じる。時間は深夜をまわっていたが、いつまでもこの繭の中で守られていたかった。  玄関で物音がした。それでも九月は固く閉じた目を開けなかった。 「うわ、なんだこれ。……いつにもましてひどいね」 「……」 「あんた今日、俺を無視しただろ」  衣服をかきわけるようにして九月までたどりつくと、ぶっきらぼうに言った。 「なあ、どうしてそんな意地悪なんだよ。俺に優しくしようとか、思わないの?」     
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