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 身動きせず、それを聞いた。 「……ってかこんな遅い時間に片付け? そもそも、何でシャツと革靴だけ? ほら履けよ」  ごそごそと床をあさって、たまたまそこに埋もれていたパンツを拾い上げる。 「まったく、あんたボトム何本持ってんだよ」  差し出された手を振り払った。 「……お前のこと最初から嫌い……」  気がつくと、駄々っ子のように言っていた。 「嫌いって」  大洋は、フッと笑いをふくんだため息をつく。その感じが、優しく大人びていた。 「そういうこと、すぐ言うよね」 「保科とつきあったことのある奴なんか、大嫌いだ」  遊ばれて、捨てられた。保科の特別になりたかった。  いきなり泣き出した九月に、大洋は困惑している様子だった。しばらくして、武骨な手が、おそるおそる九月にのびた。服の海から引っ張り上げられるように助けだされ、背中を撫でられる。  九月は、保科との間にあったことすべてを、大洋に話す。出会って、狂ったように夢中になった。そばにいたが、ないがしろにされた。キョウイチとの間に入りこむことなど一切叶わなかった。  何かが決壊して、そうしないと息ができないみたいに、あらいざらいをぶちまけた。 「……何も、起こらなかった」     
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