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大洋の手を借り、売れそうなものは知り合いのブランド古着屋に買い取ってもらうよう手配する。出てきた見積もりで、借金を完済できることがわかった。
「この山はどうすんの? 捨てるの?」
「うん、状態もそんなよくないし、安物だし」
「じゃあ、フリマで売ろうぜ」
絶対そんな面倒なことはしない、と言いはり、知らん顔をきめこんでいたが、準備を始めた大洋の手際の悪さを見ていると、手を出さざるをえない。
フリマ当日も、見栄えよく服を並べたり、接客するのはほとんど九月で、大洋はすぐその辺をぶらぶらしたり、余計なものを買ったりして完全な戦力外だった。
なぜわざわざとった休みの日にこんなことをしなきゃならないのだ、と思ったが、販売を生業にしているサガで、客が来るとつい愛想よく立ち働いてしまう。九月のフリマショップは繁盛し、服や小物は瞬く間に売れていった。
午前中が勝負のフリマでは、午後にさしかかると、客もまばらになる。在庫も数点のみになった。
あまりの日差しに、売り物のハットをかぶっていたが、それも売れてしまい、それを見ていた大洋が、よその店から数十円で買ってきたという農作業風の麦わら帽子を、九月にかぶせた。
大人しくされるがままの九月に、大洋は、つまらなさそうに言った。
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