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「……ダサくしてやろうと思ったのに、なんか普通にそういうファッションみたい、ムカつく」
悪態をついた大洋は、ようやく九月の隣に座った。それからは、どこにも行かない。
大洋に渡されたペットボトルの冷たいお茶を飲みながら、変な気分になる。
ヤるだけの関係のはずが、こんな真っ昼間の公園で二人仲良く並んでフリマとか、調子が狂う。まるで友だち、あるいは他の何か。
「なんか、あんたさ……」
大洋は、残っていた数点をすべて買い占めた客が行ってしまうと、ぶっきらぼうに言い出した。
「釣り渡す時、なんで、こうふわっと両手て包むみたいに渡すわけ?」
「は?」
「ほら、こんな風に」
大洋は実際に両手で九月の手を包み込んで、やってみせる。
「……小銭とか、落としたら困るだろうし」
九月は口の中で歯切れ悪く言い訳をする。どうしてそんな責めるような口調で言われなければならないんだろう。
「最初俺にもやったよね。こうやってふわっと包み込んで……そんで」
大洋は大真面目に九月の手をとった。が、すぐにひっこめる。二人はその時のことを思っていた。九月は大洋の手のひらを舐めた。指をしゃぶった。そして、その指で口の中を犯してほしいとねだった。
ひどい出会いだ。
だけどその時はとても切実に、それを求めたのだ。
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