回想……回送……改装

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 下半身をモワンさせて、期待に胸ドキを隠しきれない。  ぼくたちは黙っている時だけ”清楚な男子校生”というステータスが保たれた。  しかし普段接していない別種(女子)の前では、全く喋れないという事実だけが真実だった。  時間だけが遠い親戚の法事のように、淡々と過ぎていく。  こうなればプライドを捨てて、お笑い担当になるしか会話の糸口も見えてこない。  男子校に通うと、男子としての見栄やプライドは、とうの昔に捨てている──と思わなきゃやってられない。  女子は単純だから、ぼくたち男子校生が冗談なんかを言って笑うと、 「意外~っ! 男子校だから、もっと気取ってるのかと思ってたァ~。てっきり私たち、男子校ってのを鼻にかけて軽くあしらわれるのかと、内心びびってたんだァ~」 「まさか……ぼくたちも共学の男子と同じで、普通の高校生だよ?」 「エェーっ! でも、下ネタとかはさすがに言わないでしょう~?」  ぼくたちは視線を交わす。  その目の奥には「むしろ共学よりキワドイからァ~」という色が浮かび上がり、思わず苦笑する。  すると女子はまた別のほうへ勘違いしてしまう。 「あ、やっぱり? だよねぇ……ははは」  ぼくたちの苦笑を、そんな話ぼくたち男子校生たちがするわけないでしょ! とでも思ったんだろうか。  そんな中、毎回、あの話題だけは意図しないところでスベッていた。  うちの学校は、組(クラス)を担任の名前から取る。  佐藤先生のクラスなら「佐藤組」  鈴木先生のクラスなら「鈴木組」  残念ながらぼくのクラスの担任は……山口先生だった。 「アハハ……おも、オモシロいよ(むしろ一周まわって?)」  嘘じゃないからァァァ!  そんなぼくにも春が来た。  二年生の誕生日のことだ──。
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