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「今日は、あの人たちと…………」
(でぇぇぇー!!!!?)
「ひどいよねェ……。たまにいるんだァ。ああいうお客さん」
リキヤさんは溜め息混じりに言った。
先輩たちはシャンパンタワーを、直飲みでゴクゴク喉を鳴らしながら浴びるように飲みつつも、緊張しているぼくを指差しケラケラ爆笑していた。
「もしかして、知ってる人……?」
「いーえ。全然ッ!」
「そう」
(他人のふり……他人のふり……他人の……)
「あ、そうだ。お名前は?」
「なっつんです」
そう言ったら、リキヤさんは真面目な顔でこう訊いた。
「なっつん……か、変わった名前だよね?」
「いえ、それ、愛称ですからぁ」
「あっらぁ……」
初対面なのに……バカみたい。
ぼくを和ませようと、わざとポンコツなふりをするリキヤさんに……もうすっかり心を奪われ、惹かれはじめていた。
それから二人で、思う存分血液型当てクイズを楽しんだ。
「血液型は……? あっ、ちょっと待って。今、当てるね?」
「どうぞォ~」
リキヤさんは長い目つげを瞬かせて「うーん……」と考えてから、
「A型?」
「いえ……」
「あっ、じゃあB型だァ~。ゴリラとおんなじだね?」
「それも……違います」
「んーン。んーン。なっつんは、どぉーみてもABだよねッ」
初めてぼくのことを「なっつん」と呼んでくれた。
嬉しい……。
「惜しいなァ……えへ」
もう残り一つしか残ってない。
そうぼくの血液型は──。
「ン…………血液型、もう他にはないよね。 特殊な人?」
(いーえ! オーですよォォォ! Oをお忘れなくーっ! リキヤさんッ)
そんなこんなで”素敵な時間”は、あっという間に過ぎ去っていった。
シャンパンタワーを全部飲み干して、ヨレヨレになった先輩たちが目配せをしたので、ぼくは先にお店を出ることになった。
「先に出ちゃってて」口元がそう言っていた。
ぼくが席を立つと、リキヤさんも、どうやらぼくと同じ気持ちのようで、名残惜しそうに耳元で囁かれた。
「なっつん、C型があった、じゃあああン! そうだ、それだ」
「そうっすねー……えぇ。(C型だったと思います。そんな気がしてきたあ~)」
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