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そろそろ”世”が明けようとしていた。
トマリーは、いまだ夢の途中──。
片足だけ床に付けて踊る瀬戸物人形のように、トマリーは今夜も同じ場所をくるくる、くるくると回り続ける。
鬱々と明けゆく灰色の空は白紙に戻れず、黒く塗りつぶすことも叶わない。
窓から差し込む僅かな朝の日差しが、今日もトマリーを捉えた。
毎夜、独演会を繰り返した挙句、朝になるとまた同じページで閉じられる。
”それ”は、今朝も明け方まで続けられた。
トマリーのアルバムだけは──。
今でも十六年の歳月を繰り返していた。
新たな一日の半分は、依然、眠れぬ夜のまま──。
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