第一章『謎の転校生』

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僕はおどおどと言ったけれども、千尋は思い切って話しかけたみたいな感じだった。 これはもしかして、甘酸っぱい青春の味なの? ふたりは、とってもキュンキュンしていた。 私の心臓の音が聞こえちゃう、恥ずかしい、お願いこの沈黙を破って神様!! と千尋は思わなかった。 だから普通に、 「やっぱ何でも無い、ん? 電車賃って何円かわかる?」 「180円位だと思うよ」 「やっぱり?」 で終わった。 それから間もなく上岡と六郎が一緒にやってきた。六郎にいたってはヘラヘラと笑っている。 「ちづる呼びにいってたーハハ!こいつ呼ばないと遅刻しそうじゃんね?」 「うるさい、朝早くから起こしにきやがって」 イライラした様子の上岡は寝癖がすこし残っていた。きっとよっぽどせかされたのだろう。 こうして集合時間を連絡したメンバーは皆集まったので一同は電車に乗った。 ガタンゴトン、ガタンゴトン―― 重い金属音が規則的に聞こえてくる。電車特有の音。電車通学が終わってもたまにこの音が聞きたくなってくる。心のどこかを刺激する音。  町までは電車で約30分。一人でいれば長く感じるかもしれないけど、今日は友達がいるからとても楽しく、30分なんてあっという間だ。 「あれ?なんか誰かいない気がするんだけど……気のせいかな?」 千尋がふと思ったことを口に出す。 「ん?気のせいじゃないか?ちゃんとみんないるぞ?」 僕はその問いに答えた。 「そんな小さいこと気にしないで、みんなでしりとりしようぜ!」 「お前はガキだな」 「じゃぁちづるはやらなくていいぞ!奇下と千尋と三人でやろ!」 「別にやらないなんて言ってないだろ!」 「なに?やりたいの?」 「……まぁ暇だしやろうか」 「ハハ、素直じゃないなぁーまったく」 六郎と上岡はなんだかんだ言って仲がいいなぁ。僕も千尋もこのやり取りを眺めながら微笑んでいた。そこから隣町まで四人でしりとりをしていった。ちなみに、毎回『ん』の付く言葉しか言わない六郎が全敗という結果だった。
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