第二章『受験戦争前の戦争』

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六郎くんと奇下くんが話している最中、私は異様に落ち着きをなくしていた。何分、六郎くんは声が大きいので会話の大半は丸聞こえだ。たしかに私も廊下で二人の間になにがあったのかものすごーく気になっていたのだ。そんな落ち着かない姿を沖野に見られてしまった。 「……千尋ちゃん、どうかしました?」 沖野が何かあったのかと心配そうに見つめてくる。 「えぇっと、なんでもないよ!大丈夫」 私は不自然に何もないように振る舞った。 「奇下くんと大星さんが二人でいたことが気になるの……?」 図星だ。私ってそんなに周りから見ても分かりやすい人間だったのかな? 「そそそそそそそ、そんなことないって!」 またごまかそうとしてしまった。おかげで声が裏返って余計に怪しまれる要素が生まれてしまった。 「千尋ちゃん、ごまかすの下手ですね。でも大丈夫ですよ。さっき彼女に聞いたらアドレスを交換してただけみたいですから」 「え?沖野ちゃんそんなに大星さんと仲良かったの?」 私は純粋にそっちの方に驚いてしまった。 「まぁ席も近いので結構話したりはする方ですね」 「そうなんだ」
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