第二章『受験戦争前の戦争』

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「なんだよ暑苦しいな!まだまだ夏なんだからあんまりくっついてくるなよ」 僕はその行為を冷たくあしらう。 「もう、つれないなぁ……」 魅子はしょんぼりしながら僕の後をついて居間に向かう。 「早い帰りじゃないか」 信夫がプリッツをポリポリ食べながら話しかけてくる。 「まぁね。今日はガリレオールには行かなかったんだ」 「なに?千尋ちゃんと喧嘩でもしたの?」 魅子が気になるのかグイグイ質問してくる。 「喧嘩というか、なんだか放課後からやけに千尋が冷たかったんだよ」 思わずさっきから悩んでいたことを魅子に話してしまった。 「あー洋一なんかしたんでしょー?原因はなんなの?思い当たる節はないの?」 「うーん、特に特別なことをしたというわけじゃないし」 「なんかあるでしょ?例えば、他の女の子と仲良く話したとか」 「え?うーん……話した……あ!授業中に転校してきた女の子と二人で廊下に立たされて、なんか成り行きでアドレス交換したわ!」 「その子、かわいいの?」 「まぁ普通に美人だね。誰が見ても美人って思うタイプだ」 「あんたそりゃぁー機嫌も悪くなるわよ」 魅子は呆れたような顔でそう言ってくる。 「え?なんで?」 僕は言っている意味が全く理解できずに聞き返す。
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