第二章『受験戦争前の戦争』

69/81
前へ
/630ページ
次へ
「ぷるるるるるーーもしもし?」 彼女はワンコールで出た。早すぎる。 「あ、もしもし。なんで知ってるの?」 早すぎて動揺した僕は主語のない質問を千尋にぶつけてしまった。 「……沖野(おきの)ちゃんから聞いたの」 「そうなんだ。いやあれはね」 ここで事細かに今日の実験中の出来事を千尋(ちひろ)に説明する。僕は説明下手なのでこのことを話すのに1時間くらいかかったけれど、段々千尋の声も明るくなっていったので安心した。 「なんだそうだったんだ。ふふふ、なんか安心した。奇下(きげ)くんは汚らしい変態仮面貴族じゃなかったんだね。なんかごめんね。ありがとう。じゃぁまた明日ね」 そういうと彼女との電話は終了した。何故このことを話して彼女は安心したのかよく分からないが、丸く収まったので良しとした。僕たちは付き合っているわけでもないのになぁ。 また布団の上で頭を悩ませていると、僕は眠っていたようだ。気付いたら朝になっていた。
/630ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加