第三章『くたびれた青春』

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僕はソファに寝転び天上を見上げていた。今日は流石に学校は休みである。 テレビのニュースでは昨日の事件を繰り返し喋っているのが微かに耳に入る。 「月の石か……ポケモンだと大したアイテムじゃないのにな」 たしかお月見山あたりで拾えてピッピがピクシーに進化するのに必要だった。ついでに言うとニドラン♂、♀がそれぞれニドキングとニドクインになるときにも使用される。なみのりを覚えるニドキングが僕は好きだった。 「そういえば超能力の話も上岡(かみおか)はしてたなぁー」 昨日彼が言っていたことを思い出しながら、もう一度記憶を遡る。 「手口(てぐち)……あった、こいつか」 上岡は何かの紙を見ながらそう言った。よく見るとその紙はこの前上岡が父親から拝借してきたと言っていた『敵組織超能力早見表』であった。 「どうだ? 手口ってやつはどんな能力をもっているんだ?」 六郎(ろくろう)もかなり気になるのだろう。食い入るように聞いてくる。 「手口の能力は……『不老不死』だ」 「不死……老いないし死なないってことか?」 「おそらくそうだろう。自分が死なないからこそゲーム感覚で人を死に追いやることができるのではないか?」 なるほど。でもこの時は死なないのってちょっと羨ましいな、と僕は内心思っていた。
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