第三章『くたびれた青春』

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3班 大星(おおほし)沖野(おきの)が隣同士に座り焼き肉をじっと見つめている。 同じ班の船酒仁司(ふねしゅじんじ)と津原佳代(つはらかよ)はカップル同士仲良く話している。 「ねえ、仁司、口開けて?」 「やめろよ! こんな所でみっともない!」 「本当ですよね? こんなところで見せつけているのでしょうか?」 「いやー我々そういうのは興味ないのでうっとおしいですねー」 手忠の友達の恒田(つねだ)牧場(まきば)はそんな2人に嫉妬して嫌味を言っている。 「なによ、アンタ達! いちいち口挟まないでくれる?」 津原は、恒田と牧場の眼鏡越しの嫌らしい目を見て言った。 「じゃあ言わせてもらいますけど食事の場でそのようなモノを見せられると食がすすみませんね」 「わかりますなー、自慢されても」 「なによ!」 「まあまあ佳代……ごめんな恒田、牧場?」 「まあ特別にいいとしよう」「ですな」 「話をしている所悪いけど、肉が焦げているのではないか?」 大星は肉を見つめながら言う。 「あ! 本当だ! すぐ取らないと」 船酒は頼りになる男、3班のお兄さん的存在だ。 「すごーい仁司! 優しいのね!」 「おい抱きつくなって!」 熱々の肉を掴んだトングは津原が押したせいで沖野の背中に入り込んでしまう 「きゃあああああ!! 熱い!!」 「あ! ごめん」 「ほうほうこれはたまりませんな」 「ですな」 「取って下さい!! あ……熱いです」 大星は沖野の背中から急いでトングと肉を取り出した 「大丈夫? 熱いだろう?」 「……ありがとうございます、ぐす」 「背中を見た方が良い……お手洗いに行こう」 こうして大星と沖野はお手洗いに行った。 「いやあ沖野さんに触れた肉……たまりませんなあ! 頂きましょう」 「そのまま食べるのが一番ですな」 恒田と牧場は薄気味悪い笑みを浮かべる。 「あんたたち、一生恋人出来ないわよ」
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