第三章『くたびれた青春』

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その頃、千尋は家にいた。 「おじいちゃん! これバターなくなっちゃった!」 「ふふ結構だね、バターは私の部屋の右にあるよ」 「え? 右?」 私はおじいちゃんの、お手伝いをしていた。 平日の昼間はお客様が少ないが常連客の方が何人かいる。 「おじいちゃん! 右ってどういう事??」 マスターの部屋から千尋は大きい声で訪ねる。 「ははは、右と左もわからないのか千尋は……お箸を持つ方が右だぞ」 「それはそうだけど、えーっとバターバター」 マスターは、コーヒーを飲んでいる年配の男と、話をしている。 「千尋ちゃんももう高校3年生かー、この前まで本当に小さかったのに早いもんだ」 「フフフ我々も歳を取ったものだね」 「小さかった頃は男の子と間違えるくらいにやんちゃだったのに、今じゃあすっかり綺麗になって」 「フフフ我々も歳を取ったものだね」 「おじいちゃーん!!バター何処にあるの?」 「相変わらずおっちょこちょいなんだな千尋ちゃんは」 「フフフ我々も歳を取ったものだね……千尋ー? バターは冷蔵庫の奥だぞ」 「え? 冷蔵庫?」
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