第三章『くたびれた青春』

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「ふぁぁぁー、そろそろ帰るか」 僕はベンチから腰を上げた。なんだかんだいって今日は丸一日、家のそばの公園で過ごした。途中で魅子(みね)も来て少し話していたが、マンモス高校のジャージを着た若者が二、三人その公園に来た途端、顔色を変えて家に帰ってしまった。体調でも悪くなったのかな? 「お腹すいたなぁ。今日のご飯はなんだろう。マツタケかな? それとも茶碗蒸し? いや、うどんかな」 純和食を想像しながら家路に立つ。あたりはすっかり薄暗くなっていて近隣のほとんどの家からは温かい光が漏れている。数日前起こったあの事件とは裏腹に各家庭からは確かに生活の色が見えている。そんなことを考えると平穏な日々がどれだけ愛おしいものかとも強く感じられる。こんな日々がずっと続いたらどれだけ幸せなことか。
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