第三章『くたびれた青春』

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カキーーン!!! 盛大な音がグラウンドに鳴り響く!! 「うおおおおおお! 坂口(さかぐち)やるじゃねぇか!」 このセリフ六郎(ろくろう)っぽいでしょ? でも違う。これは理科室のくだりで出てきた福田潤太(ふくだじゅんた)のセリフだ。普段あまりしゃべらず、小説への登場シーンの無い彼が大声を挙げたものだからみんなびっくりした顔をしている。 「お前、それは言い方的にも六郎くんのセリフなんじゃないの?」 真面目な手忠(しゅちゅう)はこんな空気でも正論しかいわない。なんとつまらない男か。 「あぁ、ごめん。ちょっと興奮しすぎて」 福田も手忠に言われたら大人しくなるしかないと悟ったのだろう。ベンチに座り直した。 野球に話を戻すと現在5回裏、団地高校の攻撃。スコアは2対3で団地高校がリードしている。ルールとして皆プロ野球に憧れているので普通に9回までやることになった。 今さっきの快音は主砲の四番、坂口(さかぐち)の打った音でツーベースヒット。続くは五番の六郎(ろくろう)である。 「六郎って名前なんだから六番にすべきじゃないの?」 平田(ひらた)がこの場で意味の分からない発言をしたのでチームの心は一つになり皆でシカトした。 「おっしゃー六郎!! 続けよ!!」 「任せとけって! なんか最近、奇下(きげ)よりも目立ってきてるし、ここで活躍して主人公の座をいただくことにするぜ!!」
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