強き思い

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━━眩しい光に包まれ、次第に瞳が慣れたそこは……。 手作りのお店が立ち並ぶ、雑然とした商店街。皆薄汚れた衣服を纏い、誰一人として裕福なものはいなかった。しかし、ゆったりとした空間。 その中を必死に走るメアリーがいた。古びたカバンを抱え、奥へ奥へ。賭博場に向かうつもりだった。 しかし、人気のない場所に入った瞬間、暗転した。 「え?! 」 興奮ぎみのメアリー。恐怖より焦りが襲う。 急がなくちゃいけないのに、急がなくちゃいけないのにと。 『……娘よ。汝、何故そこまで他者を思う? 』 頭に直接、ビリビリと響く。 「大切だからに決まってるでしょ?! 」 見えない存在に恐れていないわけではなかった。ただ、早く稼いで取り戻さねばならないものがある。 『優しさなど、一時のものに過ぎぬ』 「んなことわからないでしょ?! 」 苛立ちが勝ってくる。 『汝が勇気、すべてを守るには小さすぎる』 「……メーちゃんは、メーちゃんが守りたいものしか守らない。たとえ、誰かの命を奪うことになっても! 」 真っ直ぐな瞳で暗闇を見据える。 暫しの沈黙。ややあって。 『……娘、汝の願いを叶えよう。対価と代償をもって。我らと契約せよ』 「あんた、誰なの……?」 『我、碧眼の猟犬(グリーンアイズ・ハウンド)。汝、我が主となれ。さすれば、汝がために使役されよう』 悪魔と契約、そんなありきたりで後先がわからないものだと思った。だが、逆の立場に瞳をぱちくりする。 確かに暗闇に碧に光る瞳が見える。 「"我ら"って言ったよね? 他にもいるの? 」 『然り。主のいないものはそこかしこにいる。必要なとき、必要な"真名"が浮かぶ。我らと契約せよ。そして、"悪魔"となれ』 メアリーは瞳を閉じる。大切なものたちの顔を浮かべ、ゆっくりと瞳を開く。 「……おまえたちは、メアリーのために戦え。メアリーの大切なものを守るために戦え。メアリーが守りたいものを傷つけることは赦さない」 沈黙は肯定。 『契約は成された。汝、"瞬き輝く悪魔(トゥインクル・デーモン)メアリー"。我らが主よ』 碧眼の猟犬(グリーンアイズ・ハウンド)がゆっくりとその姿を現す。黒き炎のような揺めきの大型犬。瞳は碧眼。静かにかしずいた。
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