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「……ねぇ、対価と代償の説明がまだだよ。何を出せばいい? 」
『対価はその"人間としての体"、代償は"生け贄"なり』
メアリーは考え込む。
「体の一部ずつ……誰かにあげるのはあり? 」
『可能だが、苦痛を伴う。契約と共に悪魔になったが、体はまだ人間なのだぞ』
メアリーはふっと笑った。
「心配してくれるんだ? ありがとう。でも、大丈夫。どんなことをしても、助けるって約束したんだ」
瞳は全く揺らがない。彼女の心も揺らがない。
……躊躇なく、お腹に腕を突っ込んだ。噴き出す血飛沫。
「グゥ……」
悪魔になったとは言え、メアリーはまだ子どもだった。転んで出来た擦り傷なんて数えきれないだろう。鞭打たれることもあったろう。賭博をしていたからと、子どもに本気で汚い大人のオトシマエなんてあるわけもなく……、激痛がメアリーを襲う。悪魔になったことで、迷わず"目的"を掴む。
それは━━腎臓━━。
「ぁあぁ……、エリオ、ット、にい、ちゃの分……」
朦朧としながら、口から血を滴らせながら、体内から引き抜き、掲げる。すると、腎臓は光の粒となって消えていく。
メアリーは直ぐに自分の血で泥々な手を顔に向かわせた。カッと見開くと、ズブッと指を眼球をくり貫いていく。
「あ、ぐぅ、が、ぁあぁああ、ああ……」
口から、血とともに涎も這い出す。
「アー、ちゃ、クーちゃ、の……」
ドクドクと取り払われた2つの空洞から、止めどなく涙のような血がどろっと溢れ出す。ブルブルと血で滑った眼球を掲げる。それもまた、光の粒となって消えていく。
「あ、はぁ、う………ぐ……」
当に限界は越え、意識は混濁していた。しかし、メアリーは辛うじて意識を保った。まだ、まだ終わりではない。だが、小さな彼女の体が耐えられるはずかない。ひとえに、悪魔の精神。それがなくば、既に息はなかっただろう。
だが、これで終わりではない。全身無惨な状況になりながらも、メアリーはゆっくりと腕を下ろした。
次の瞬間、人間では考えられない力で、自らの両の足を引きちぎる。
「あ"あ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"……! コー、ちゃ……」
噴水のように血が噴き出す。……全身自らの血にまみれ、意識を手放す。
引きちぎった両の足は、光の粒となって消えていった……。
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