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だが、理久はそんな俺の頭の上から、ばさりとタオルを被せてきた。
「わぷ?」
「それでエアコンの風に当たったら風邪を引く。風呂場へ直行しろ」
「へーい」
ぐしょぐしょのスニーカーを脱いでいると、理久が聞いてくる。
「メシは?」
「まかない食ってきたから、大丈夫」
「そうか。じゃあゆっくり入ってこい」
「えー。ざっとシャワーでいいよ。暑いし」
一刻も早く恋人といちゃつきたい俺に、理久は厳しい顔で首を振る。
「ぬるめに設定してあるから、ちゃんと湯につかれ。仕事で一日立ちっぱなしだろ。疲れが違うぞ」
そう言って、遊び放題の大型犬に言い聞かせるみたいに「ほら」とバスルームの方を指差す。
かつて店舗で販売業務をやっていた奴の言うことなだけに、説得力がある。俺は大人しく言うことを聞くことにした。
「うえー、パンツまで濡れた」
雫が垂れそうな服を廊下で脱いでパンイチになると、俺はそうだ、と理久を呼び止めた。
「なんだ?」
LDKに戻ろうとする理久が振り向く。
「えっと。仕事用にTバックの下着買うって言ったら……お前、怒る?」
俺のその台詞に、理久は形のいい眉を跳ね上げた。
「湊っ。お前、仕事って」
「いや、違う違う、そうじゃなくて」
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