20人が本棚に入れています
本棚に追加
「太陽はあっついから止めようよ。
どうせ掴むならリー、お星さまがいい!!」
人が感傷的になっているというのに、空気の読めないリーちゃんはキラキラした目で私にそう言ってきた。
「星?どうして?」
「お星さまのがピカピカ光って宝石みたいだから!!
リー宝石大好き!!」
宝石なんて何が良いのか分からなかった私は首をひねったけれど、同じように『じゅえりー』に興味なんて無いと前に言っていたキーちゃんは違った。
「キーもお星さまが良い……」
ボソッと、呟くように言ったキーちゃんに、「裏切り者」と私が憤慨した。
「夕陽がキレイだから私を連れてきたんじゃない!!
それなのに二人はやっぱりお星さまのが良いだなんて!!
ウワキだわ、フケツだわー!!」
先月見たドラマの台詞を、意味も分からず私が二人に口にすると、キーちゃんは着ていたズボンの裾をぎゅっと握り締めて、寂しそうな顔で言った。
「お星さまに願うとね、お願い事叶うの。
だからキー、お星さまを捕まえてお願いしたいの。
パパとママが、もう一回仲良くなりますようにって」
言われて私は余計な事言わなきゃ良かったと、激しく悔やんだ。
リーちゃんとキーちゃんのパパとママは、パパの仕事が忙しいせいでケンカばっかりしてるらしい。
だから二人はいつも両親がケンカしてる間、ずっとここでケンカが終わるのを待っているのだ。
空気が読めないのは私も同じだったようだ。
ここは二人よりオトナな自分がなんとかしなければ。
「……んもう、しょーがないなぁ。
分かったわよ、掴むのは太陽じゃなくて星にする」
どこか諦めたように私が言うと、キーちゃんとリーちゃんは二人して花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「本当!?
ありがとうレンちゃん!!」
「レンちゃん、お星さま掴めたら私にちょーだいちょーだい!!」
「わかった……わかったわよ。
約束する。
二人にお星さまをプレゼントする。
私にどーんとまかせなさい!!」
そう言って私はリーちゃんがさっきやったみたいに、思いっきり胸を張って威張った。
「ありがとうレンちゃん!!」
キーちゃんが泣きそうになりながら笑顔で言った。
「一番おっきいやつね!!」
興奮で顔を真っ赤にしながら、リーちゃんが言った。
(私の方こそ、ありがとう)
私は心の中で二人にそうお礼を言った。
最初のコメントを投稿しよう!