礼央、34歳。

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「いつからだったろうな、お前が俺の前で照れるようになったの」 「そ、そんなことないもん」 「いや。ああ、あの時だ」 「やだ! 思い出さなくていいっての。もう、やだ。僕、帰る。違う、帰るとこないから、青山さんのとこ行く。妙香寺でもいいや」 「俺のとこ来いよ。小さいけどマンション買ったんだ」  今日の朝、仕事で泊まっていたホテルをチェックアウトしてしまった清良のキャリーケースに礼央が手を添えた。 「……千歳がいるんだけどな」 「それは、聞いてない。千歳、一人暮らししてるとか言ってたのに、いつから?」 「清良がフランス行って、しばらくしてからだよ。俺が大学の学費、出してやってるんだ」 「レオン、パパになれたんだ」 「まぁな。後はうちに帰ったらゆっくり話そう、清良」 「……微妙な空気になりそうな予感しかしないんだけど」 「でも、俺は千歳には負けないぜ」 「おじさんが、何言ってるんだか。千歳も混ぜて、3Pしよ」 「清良……。それは、やめておこう、な」  二年前と中身は全く変わりのない清良が、夜の街をコートのポケットへ手を突っ込んで、スーツケースを引く礼央の前を背筋を伸ばして歩いていた。 「ふたりが一緒に暮らせるようになって、本当に良かった」  そして清良は振り返り、照れながら笑った。 「僕ね、ずっと、ずーっとレオンに会いたくて、たくさん頑張ったんだ」  走ってきた清良は、礼央の首根っこに抱きつきそっと囁く。  大好きだよ、レオン。                          <了>
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