礼央、34歳。

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 滅多に来ないこちらの出口は、二年前、清良に会った時とあまり変わっていなかった。  大きく貼られたポスター。ここに出る広告は、今、話題のモデルを起用したものと決まっている。そこは、待ち合わせ場所にもなっているが、やたらと女子高生が多く混雑していた。 「……嘘だろ」  礼央は、思わず本を落とし足を止めた。  目の前に清良がいる。髪が少し伸び、あどけなさを残す清良が、ハイヒールを履いてこちらを見ているのだ。上半身を恥ずかしげに隠すが、その胸は真っ平らで男とも女ともつかない妙な色気で誘っている。 「このポスター……」 "この後、カメラマンとおせっくすしちゃった"  清良の声が聞こえたような気がしたが、辺りを見回しても清良はいない。目に留まったのは、ガードレールに腰掛けた大きなキャリーケースをそばに置く背の高い外国人。目深にキャスケットを被り、脚を投げ出した背の高い男はイヤフォンをつけ、うつむきながら携帯をいじっていた。 「礼央さん、どこ行くの。乗ってく?」  呼ばれて振り返れば、保坂の車から寧々が手を振っている。が、運転席ではなく、後部座席。よく見ると保坂が運転をしていた。 「お前、また保坂さんをこき使ってるのかよ」 「コイツ、速度超過で一発免停くらったんだ」  ポスターをもっと見ていたかったのに、降りてきた寧々に捕まり、強引に後部座席に押し込められた。寧々は樹に家業の旅館を譲り、保坂のところで運転手をしている。随分と性格が丸くなり、スーツもよく似合っていた。決して組員としてではなく、あくまで保坂の個人的な運転手だった。 「ありがとう」  ホテルの車寄せに降ろしてもらうと、ふと二人が同じ腕時計をしている事に気付いたが、礼央はあえて触れなかった。
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