礼央、34歳。

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 パーティの控え室では、真澄がガチガチに緊張して髪をむしっていた。 「おいおい勘弁してくれよ、真澄。一回、深呼吸しよう」 「キョウハ、キョウハ、オレノタメ二、ワタクシのタメニオアツマリ、ツマリ」 「落ち着けよ、真澄。昨日、練習した通り言ってみ」 「清良とおせっくすしたい」 「違う。それは俺がいつも言ってる事だ」 「オレモキヨラトオセックスシタイ」 「それについて今度、本人を交えて話し合おうな。ストーカー千歳から、俺への嫌がらせとして情報提供受けてるからな。ほら、真澄。昨日の練習通り言ってみろ」 「き、今日は、私のためにお集まりいただき、ありがと、ございます」 「おめでとう、真澄」  パーティには、真澄の先輩も来ていた。彼は、この賞を熱望してるが、まだ獲った事がないと言う。物怖じすることなく、真澄がどもりながらも話す姿を見て安堵した礼央は、いつになくソワソワしパーティ後に真澄をタクシーに乗せてから、事務所に立ち寄った。  エレベーターに乗り、いつもの階で降りるとドアの前にキャリーケースとともに人が座っている。見覚えのキャスケットだ。 「レオン、やっと帰ってきた」 「……お前さ、三年近くも連絡よこさないってどういうこと?」 「青山さんも寂冲さんも、真澄さんもフランスまで会いに来てくれたけど、レオンこそどういうことよ」 「真澄も?」  ここ数年、真澄が行き先も告げずフラッと旅行に出かける事があったが、フランスとは一度も聞いてなかった。立ち上がった清良は、伊達眼鏡を掛け、また背が高くなり洗練された雰囲気に変わっている。 「俺は、金がなくて行けなかった」 「嘘ばっかり。儲かってるって聞いたよ」 「誰から?」 「千歳から。さっき、またあの冷水プレイやろって言ったら、電話切られちゃった」 「お前は、バカか。死にかけたのに……」 「あんなハードなのも嫌いじゃないし」  事務所の鍵を開けると、清良は当たり前のように入ってくる。 「お前、こんなところにいて平気なの?」 「なんで? ここ、レオンの城じゃない」 「雑居ビルだぜ」 「……ねぇ、レオン。僕、十九になったよ」 「そうだな。千歳と同じ歳だもんな」 「キャスト登録してもいい?」 「お前は……」  振り返るとコートの襟を掴まれ、口を塞がれた。腰が砕けそうになるほど濃厚で、歯列をなぞるように清良の舌が入り込んで来て、礼央の舌を絡め取って行った。
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