プロローグ

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…都内…某喫茶店…… 都心から少し外れたところにある、百合根町(ゆりねちょう)…都内の割に静かなこの町は、治安も良くて、老若男女の人口比率もバランスが良い。 それだけ、この百合根町は住みやすい町と、人々に認識されているのだ。 その町のとある一つの喫茶店『風の声』で新井場縁(あらいばえにし)は、一人でコーヒーを楽しんでいた。 店名とギャップがあるクラシカルな店内は、お世辞でも広いとは言えず、10人程が座れるカウンター席のみだ。 午後3時を回ったところなので、客は縁一人だけだった。 縁は地元の高校2年生で今年17歳になったばかりだ。 現在夏休み中なので、この喫茶店にしょっちゅう来ている。 Tシャツとジーンズという、ラフなスタイルだが、それも様になっている。 それというのも、縁は身長はそれほど高くはないが、校内でも有名なくらいの美男子で、学力も校内トップの実力を持っている。 それに合わせて、縁は独特な空気を纏っているので、インテリ感が醸し出ている。 縁はカウンターに肘を付けて、店内のテレビで放送中の報道番組を視聴している。 その報道番組では『美人女子大生作家、小笠原桃子の特集』といった、内容のコーナー流れていて、受賞祝賀会のVTR映像が写し出されている。 そんな映像を見ながら、店の店主が縁に言った。 「すげぇな……とうとう最優秀賞獲っちゃったよ…」 縁は言った。 「たっくん、それは違う……運が良かっただけだろ…」 縁に『たっくん』と、呼ばれてる店主は香川巧(かがわたくみ)と言う名前だ。見た目は茶髪の短髪に、あご髭を生やしている。それに肌は色黒で、筋肉質、年齢は27歳で一応既婚者だ。 巧は言った。 「でもよぉ、縁…こんな大変な賞は中々獲れないぞ…」 縁は溜め息を付いた。 「はぁ~っ……大変な賞だから、たちが悪いんだよ…」 縁が溜め息をした後に店の入口から、一人の女性が入って来た。
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