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ここから、始まる。
私よりも十センチ以上は低い身長に、まだ少しあどけなさが残る顔。
オシャレとはほど遠いTシャツに薄い服を羽織ったお手軽な恰好と、迷彩柄のハーフパンツ。
私を見つめる瞳はくりくりとしていて可愛く、思わず抱きついてしまいたくなるほどに愛らしい。
そんな小学生を相手に、高校生の私はものすごく動揺していた。
「…………」
「…………」
自分の部屋で男の子と顔を合わせたまま、暫くの間固まる。
そうして混乱する頭のまま、ようやっと口から出てきた言葉はなんとも間抜けなものだった。
「ど――どちらさま、ですか?」
「っ……お前なぁ……」
どうやらその一言が癇に障ったようで、男の子はものすごい目で私を睨みつけると、近所迷惑なくらいの大音量で叫んだ。
「橘 海璃(たちばな かいり)! 幼馴染みの顔を忘れるなよ、このバカ!」
一体全体、どうしてこんなことになってしまったのか。
それにはまず、前日にまで遡らなければならないわけで――。
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