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「とは言っても、あたしも詳しいことはわからないんだけどね。何しろその噂のことは、今朝学校で聞いただけだから」
「そっか、今朝に――って、今朝!? うそっ、私初耳なんですけど!?」
そんな噂が広まっていたなんて全然知らなかった私は驚きのあまり、弁当を落としそうになった。
「……乙羽って相変わらず鈍いよね。あたしがこうして教えてあげなかったら、ずっと気づかなかったんじゃない?」
「うぅ……そうかも……。ありがと、トモ。教えてくれて」
「いーよ、別に」
友瀬は私の頭に手を置いて、ぽんぽんと撫でてくれる。
その手つきは優しく、まるで私を慰めているかのようだった。
「まぁ、あたしだって最初は驚いたしね。今まで恋愛の“れ”の字も感じさせなかった二人が突然付き合いだしたー、なんて話」
「あのさ、まさかとは思うけど……トモもそのデマ、信じちゃったとか言わないよね?」
「あー……うん、まぁ……」
撫でる手を止め、困ったように頬をかく友瀬の視線は私を見ていなかった。
「ちょ、ひどっ!?」
「やっ、だってほら、よく二人とも夫婦漫才みたいなことしてるし、仲良いじゃない」
「あれは漫才なんて楽しいものじゃなくて、ただの喧嘩だったけどね!?」
どこからどう見たら私たちが恋人同士に見えるんだか。
一度本気で眼科に行ってみたほうがいいと思う。
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